脳梗塞の特徴
脳梗塞ってどんな病気?
脳卒中の中での脳梗塞の定義
脳の細胞が損傷したことによる疾患を「脳卒中」といいます。
「脳卒中」の中で、血管が詰まってブドウ糖や酸素が行き渡らなくなって脳の細胞が死んでしまうのが「脳梗塞」です。さらに細かく分けると、細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」、大きな動脈が詰まる「アテローム血栓性梗塞」、心臓の中にできた血の塊(血栓)がはがれて脳の動脈に流れ込んで起こる「心原性脳塞栓症」があります。
脳卒中の種類
脳卒中の内訳
脳卒中は今後も増えていくことが
予想されている疾患です
かつては、死亡原因の第1位が「脳卒中」でしたが、今ではがん、心臓病に次いで第3位となっています。
ただ、「脳卒中」の発症が減少したわけではなく、「がん」や「心臓病」が増えてきただけで、「脳卒中」を発症する人も増えてきているのが事実です。早期発見や医療の進歩により、すぐに死に至る病気ではなくなってきましたが、「寝たきり」になる原因の3割ほどが「脳卒中」です。
食生活の欧米化、超高齢化社会、生活習慣病の増加など、様々な理由により、今後も増えていくことが予想されている疾患です。
脳梗塞の3つの分類
脳梗塞の種類と原因
3種類の脳梗塞
分類はアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞の3つがあります。発症機序は以下の3つです。
血栓性の機序
アテローム硬化性病変のプラーク内出血などによりプラーク拡大、プラークが破綻して血栓が成長し、血管内腔を閉塞して生じる血栓性の機序。
塞栓性の機序
心臓や近位の動脈にできた血栓がはがれて飛散し、末梢の脳血管を閉塞して生じる塞栓性の機序。
血行力学性の機序
近位の動脈に高度狭窄や閉塞病変があり、これに血圧が低下するような脱水や貧血が加わったときの遠位部の血流不全によって生じる血行力学性の機序。
3種類の脳梗塞の特徴と原因
ラクナ梗塞
主幹動脈から分岐しうる、直径0.04~0.5㎜の穿通枝動脈(主幹動脈から分岐している細い血管)が閉塞して起こる1.5㎝以下の小梗塞です。
高血圧が最大の危険因子であり、慢性的な血圧の高値により、穿通枝動脈が変性、閉塞して発症すると考えられています。初診でラクナ梗塞と診断される症例の中に、発症後数日のうちに症状が進行性に増悪して、梗塞巣が拡大するBranch Atheromatous Disease(BAD)が含まれている場合があります。BADは穿通枝動脈の入り口部が閉塞して生じると考えられており、以下のような閉塞機序があります。
①親動脈のプラークによる穿通枝の入口部の閉塞
②穿通枝分岐部のプラークが穿通枝内へ進展
③穿通枝入口部内での微小アテロームの形成
アテローム血栓性脳梗塞
頸部血管や脳血管のアテローム硬化性病変(50%以上の狭窄や閉塞)を原因とする脳梗塞です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙歴といった危険因子を合併すると、アテローム硬化性病変へと進展しやすくなります。血栓性、塞栓性、血行力学性のすべての機序によって脳梗塞が起こる可能性があります。
アテローム硬化性病変は、血流速度の影響を受けやすく、狭窄や閉塞は徐々に進行するため、側副血行路が発達し、ほかの血管から血流が補われることが多いですが、側副血行路の発達は人によって程度が異なるため、生じる脳梗塞の大きさもさまざまで、症状が軽微~重度のものまで幅広いのが特徴です。
心原性脳塞栓症
不整脈や心不全などによって心臓内に形成された血栓や、卵円孔開存などの左右シャント疾患による塞栓子が、頸部血管や脳血管を閉塞し起こる脳梗塞です。
一番の原因は心房細動を原因とする脳塞栓症です。塞栓子は大きく、比較的大きな血管に詰まりやすいため、突発的に大きな血管を閉塞します。それにより、側副血行路が発達する間もなく、閉塞血管の全領域が梗塞に陥り、広範囲な脳梗塞をきたしやすいため、症状が重度の場合が多いのが特徴です。
一度詰まった血栓が溶解され、再開通すると、脆弱になった血管を通じて梗塞内に出血する出血性梗塞と言われる状態になりやすく、症状が重くなったり、死に至る場合もあります。
大梗塞に伴う脳浮腫や出血性梗塞によって、正常組織まで圧排されて障害を受け、発症後数日のうちに脳ヘルニアと言われる致命的な状態に陥る危険が高く、一度の発作で重度要介護状態になる脳梗塞です。